当記事では、アンカースクリューの概要や用いるメリット、注意点、かかる費用について解説します。アンカースクリューを使った治療を行いたいと思っている方は、ぜひお読みください。
Contents
アンカースクリューとは
アンカースクリューとは、金属で作られた小さなネジのことです。直径が0.1〜0.2cm程度、長さが0.6〜1cmと非常に小さな物体であり、主に歯を移動させる治療において使用されます。骨にアンカースクリューを埋め込み、歯を引っ張る上での土台(固定源)として使います。
従来は対応しにくかった症例に対応できるなど、さまざまなメリットを持っている治療法です。なお、まれに脱落することがある点については注意しなければなりません。
アンカースクリューは痛みがある?
結論から述べると、アンカースクリューを用いた治療を行うにあたって大きな痛みを感じることはほとんどありません。
アンカースクリューは、顎の骨に埋め込みます。「骨に物体を埋め込む」と聞くと「痛そう」と感じる人もいるでしょう。しかし、人間の骨には痛覚がありません。したがって、埋め込む上で大きな痛みを生じさせることはほぼないのです。
ただし埋め込む瞬間は、歯茎に対して痛みが生じることがあります。しかし歯茎に対しては局所麻酔を実施するため、歯茎についても強い痛みを心配する必要はほぼありません。処置を行い、麻酔が切れたあとに痛みを感じることはあります。処置後の痛みは、多くの場合1週間程度で改善します。
どうしても痛みが引かない場合は、痛み止めを服用することで改善が期待できるでしょう。治療を行ったあとには、歯科医師から痛み止めがもらえるケースがほとんどであるためご安心ください。
歯列矯正でアンカースクリューを用いるメリット
アンカースクリューを用いて歯列矯正を実施することで、以下のメリットを享受できます。
- 従来の治療より幅広い治療ができる
- 非抜歯でも治療が可能になる
- ヘッドギアを着ける必要が無くなる
- 動かしたい歯だけを動かせる
それぞれの詳細については、以下で解説していきます。
①従来の治療より幅広い治療ができる
アンカースクリューを固定源に使用することで、従来の治療では動かすのが困難だった方向にも歯が動かせるようになりました。また、今までは実現が難しかった長い距離の移動も可能となっています。このような進歩が起きたことで、治療の幅が広がり、よりさまざまな症例に対応できるようになりました。
②非抜歯でも治療が可能になる
従来の歯列矯正の場合、抜歯を行うことで歯列に空間を作り、飛び出した歯をその空間へ入れ込む形で歯並びを整えていました。
対してアンカースクリューの場合、抜歯せず歯列に空間を生み出せます。従来の治療では困難であった「奥歯を動かして歯列に空間を作り出す」という治療が可能となるためです。非抜歯でも治療が行えるため、抜歯したくない方でも安心して治療が行えるでしょう。
③ヘッドギアを着ける必要が無くなる
ヘッドギアとは、頭にかぶる矯正装置のことです。頭や首を固定源とし、ゴムの力で上の顎を後ろ向きに引っ張って、歯並びを後ろに下げるために使用します。
ヘッドギアは便利な装置であるものの「10時間以上着けないと効果が出にくい」というデメリットを持っています。さらに見た目が特徴的であることから、患者さんが長い間装着し続けることに抵抗を感じやすく、精神的な負担を与えやすいという弱みもありました。
しかしアンカースクリューを用いた治療であれば、スクリューがずっと歯を引っ張り続けてくれるため、患者さんが着け外しを行う必要はありません。ヘッドギアのように目立つ見た目でもないので、患者さんの精神的負担も軽減されるでしょう。
④動かしたい歯だけを動かせる
従来の矯正方法では、周りの歯を固定源に用いて動かす歯を引っ張っていました。しかし歯を固定源に使うと、動かす必要のない歯にまで力が加わって動いてしまうというリスクがありました。
アンカースクリューを用いた治療の場合、固定源として使うのは歯ではなく、頑丈に固定されたスクリューです。したがって、ほかの歯に影響を与える心配はほとんどありません。
歯科矯正でアンカースクリューを用いる際の注意点
歯科矯正でアンカースクリューを用いる場合、以下のポイントについて知っておく必要があります。
- 外科手術が必要
- 炎症が起こる可能性がある
- 抜け落ちることがある
①外科手術が必要
アンカースクリューを用いて治療を実施する場合、基本的にはアンカースクリューを埋め込むための手術が必要となります。手術に慣れていない方の場合、手術に対する大きな不安を感じるかもしれません。
ただし先ほどのとおり、手術を実施する上では麻酔をかけます。さらに、アンカースクリューを埋める骨には痛覚がありません。したがって、痛みに関する心配はほとんどないといってよいでしょう。
麻酔を行う必要のある箇所は歯茎の表面だけであるため、量も少なくて済みます。さらに、処置自体にかかる時間は5〜10分程度と短めなので、長い手術に耐える必要はありません。
上記のように、アンカースクリューの埋め込みを行う手術はそう負担の大きなものではないため、安心して受けられるでしょう。
②炎症が起こる可能性がある
アンカースクリューを歯茎に埋入したことで、埋めた場所の周りに炎症が起き、腫れ上がってくるケースがあります。炎症が起こると、口内に痛みが生じたり、違和感を覚えたりすることにもつながるでしょう。
なお、アンカースクリューの埋入による炎症はしっかりとケアを行うことで防げるケースがほとんどです。歯ブラシやデンタルフロスなどを用いて、常に口内の清潔を保ちましょう。
もし炎症が起こってしまい、痛みや違和感に耐えられないと感じた場合は、歯科医師に相談しましょう。抗生物質を投与するなどの適切な処置を行ってもらえるため、大きな心配は要りません。
③抜け落ちることがある
アンカースクリューを骨に埋入した際、まれに抜け落ちてしまうことがあります。しかしアンカースクリューが脱落する確率は、1〜2割と非常に少ないのが事実です。逆にいえば、8〜9割の確率で脱落することなく成功するということになります。
実際に脱落してしまったとしても、少しだけ位置をずらし、再度埋入する形で治療をやり直せる場合がほとんどです。クリニックによっては、追加料金なしで行ってもらえるケースもあります。
アンカースクリューにかかる費用
アンカースクリューを用いた治療にかかる費用は、1本あたり5,000〜35,000円程度です。場所によっても値段は異なるため、まずはお近くのクリニックに相談してみてください。
まとめ
金属製のネジ「アンカースクリュー」を固定源として歯を移動させることで、従来は実施するのが難しかった治療も行えるようになりました。痛みやかかる時間を抑えて手術が実施できるため、手術に不安がある方でも行いやすい治療です。
治療を行ったあと、まれにアンカースクリューが抜け落ちることがあります。しかし抜け落ちる確率は低い上、再度治療を行うこともできるため、大きな心配はないといえるでしょう。
表参道AK歯科・矯正歯科では、患者さんの悩みや症例に適した治療方法を提案しています。歯に関するお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。